教えのやさしい解説

大白法 510号
 
三光天子(さんこうてんじ)
「三光天子」とは、日天(にってん)(太陽)・月天(がってん)(月)・明星天(みょうじょうてん)(星)の三つをいいます。天とは「神(かみ)」を意味します。
 法華経では、日天・月天・明星天の三天を仏法守護の神として説き、日蓮大聖人はそれを御本仏(ごほんぶつ)の一念に具(そな)わる妙用(みょうゆう)として説かれています。
 三天について、法華経『序品(じょほん)』には、
「爾(そ)の時に釈提桓因(しゃくだいかんにん)、其の眷属(けんぞく)二万の天子(てんじ)と倶(とも)なり。復(また)、名月(みょうがつ)天子、普香(ふこう)天子、宝光(ほうこう)天子、四大(しだい)天王有り。其(そ)の眷属(けんぞく)万の天子と倶なり」(新編法華経 五七ページ)
とあり、これを『法華(ほっけ)文句(もんぐ)』には、
「名月は是(こ)れ宝吉祥(ほうきっしょう)にして月天子、大勢至(だいせし)の応作(おうさ)なり。普香は是(こ)れ明星天子にして虚空蔵(こくうぞう)の応作なり。宝光は是(こ)れ宝意(ほう い)にして日天子、観世音の応作なり」
と、名月天子・普香天子・宝光天子がそれぞれ月天子・明星天子・日天子であり、欲界(よっかい)の天として法華の会座(えざ)に名(な)を連(つら)ねていると釈(しゃく)しています。
 これら三天は、『法師品(ほっしほん)』で記別(きべつ)を受け、『宝塔品(ほうとうほん)』で滅後(めつご)流通(るづう)の勅(ちょく)を蒙(こうむ)り、そして『嘱累品(ぞくるいほん)』で、
「世尊(せそん)の勅(ちょく)の如(ごと)く、当(まさ)に具(つぶ)さに奉行(ぶぎょう)すべし」(新編法華経 五二〇ページ)
と誓言(せいごん)し、末法に出現された日蓮大聖人を守護するとともに、法華経の絶大(ぜつだい)な威力(いりき)を証明しています。
 すなわち、文永(ぶんえい)八年九月十二日の竜(たつ)の口(くち)の法難(ほうなん)の際、
「江のし(島)まのか(方)たより月のご(如)とくひ(光)かりたる物、ま(毬)りのやうにて辰巳(たつみ)のか(方)たより戌亥(いぬい)のか(方)たへひ(光)かりわたる」
(御書一〇六〇ページ)
というように、不思議な光り物の飛来(ひらい)により、幕府(ばくふ)の兵士は大聖人を斬首(ざんしゅ)することができませんでした。また、翌(よく)十三日、本間邸(ほんまてい)では、
「天より明星の如くなる大星(だいせい)(お)りて、前の梅の木の枝にかゝり」(同 一〇六一ページ)
とあるように、大聖人の諌暁(かんぎょう)に対して明星天の奇瑞(きずい)があったことを示(しめ)されています。
 この不思議な天佑(てんゆう)を大聖人は、
「三光天子の中に月天子は光物とあらはれ竜口の頸(くび)をたすけ、明星天子は四・五日已前( いぜん)に下(お)りて日蓮に見参(けんざん)し給(たも)ふ」
(同 四七九ページ)
と、竜の口の光り物は月天子、本間邸の梅の木に掛(か)かった大星は明星天子であり、それらは宇宙法界(ほうかい)を貫(つらぬ)く御本仏(ごほんぶつ)大聖人の力用(りきゆう)によって出現したことを説かれています。
 また、『国府尼(こうあま)御前御書』の、
「日蓮こいしくをはせば、常に出(い)づる日、ゆうべにいづる月ををがませ給(たま)へ。いつとなく日月(にちがつ)にかげをうかぶる身なり」
(同 七四〇ページ)
との御文(ごもん)から、日天子もまた御本仏大聖人の体具(たいぐ)の妙用(みょうゆう)と拝されます。
『四条金吾釈迦仏(しゃかぶつ)供養事』に、
「当(まさ)に知るべし、日月天(にちがってん)の四天下(してんげ)をめぐり給(たも)ふは仏法の力なり」(同 九九四ページ)
と説かれているように、三光の恩恵(おんけい)は、正法(しょうぼう)の興隆(こうりゅう)、正法の衰退(すいたい)により左右されるのです。